
立川清志楼 / Tatekawa Kiyoshiro
東京在住 / Works and Lives in Tokyo
2003年 落語立川流Cコース入門
2008年 家元立川談志より立川清志楼を拝命
プロフィール
立川清志楼(たてかわ きよしろう)さんは、東京を拠点に活動する写真家・映像作家です。
独特の映像表現
主に動物園や都市を撮影した映像に実験的な編集を施し、物語性を排除した物質的な映像作品を制作しています。複数のプロジェクターを使い、紗幕(しゃまく)に投影するなど、上映方法自体も実験的なインスタレーションとして実施するのが特徴です。
「第二次三カ年計画」について
2024年1月からは「第二次三カ年計画(2024-2026)」と題したプロジェクトを進行中です。これは2020年から2023年に行われた「第一次三カ年計画」に続くもので、効率的な作品制作と流通システムの構築を目指しています。この計画の一環として、既存作品の分解・再構築といった実験も行われています。
作品の特徴
立川清志楼さんの作品は、鑑賞者の知覚に深く、そして独特な形で影響を与えます。彼の作品は、私たちが普段、写真や動画を見る際に無意識に使っている「見方」を揺さぶり、新たな視覚体験を促す力を持っています。
固定観念の崩壊
「写真」と「動画」の融合による違和感
作品は、一見すると静止画のように見えるのに、微かな動きがあることで鑑賞者の認識に「違和感」を生じさせます。この違和感は、「写真は静止しているもの」「動画は動いているもの」という私たちの固定観念を揺り動かします。結果として、鑑賞者は作品を前にして、自分が今見ているものが「写真なのか動画なのか」という問いを無意識のうちに抱くことになります。
既知の情報の更新
曖昧な境界を提示されることで、鑑賞者はこれまでの「写真」や「動画」に対する認識を一時停止し、情報を更新しようとします。これは、世界やメディアに対する私たちの固定観念を見つめ直すきっかけにもなります。
知覚の深化
微細な変化への集中
物語性を排除し、被写体の微細な動きや状態の変化に焦点を当てることで、鑑賞者は細部への集中力を高めます。ゆっくりとした時間の流れの中で、通常であれば見過ごしてしまうような「もののあり方」や「存在感」に気付かされます。例えば、動物のわずかな目の動きや息遣い、都市の光の変化など、五感を通して受け止める情報が増幅されるような感覚を覚えるかもしれません。
主体的な観察の誘発
明確な物語がないため、鑑賞者は受動的に作品を見るのではなく、能動的に「何が起きているのか」「何を伝えたいのか」を探ろうとします。これにより、鑑賞者自身の「見る」という行為そのものが意識化され、より能動的で深い観察へと導かれます。
感覚的な体験の創出
「粘着性」や「不気味さ」といった感覚
オノデラユキ氏が評したように、彼の映像には「粘着性」があり、鑑賞者を画面に引きつけます。時には微かな動きが不気味さや奇妙さを感じさせ、明確な感情ではない「漠然とした感覚」を呼び起こします。これらの感覚は、鑑賞者の記憶に残りやすく、後々まで作品について考えさせる効果があります。

哲学的な考察への発展
写真と動画の境界を探る作品は、時間、存在、物質性といった哲学的なテーマに鑑賞者の意識を向けさせます。「今この瞬間」という写真的な時間と、「流れる時間」という動画的な時間の両方を体験することで、私たちは時間の本質について深く考える機会を得るでしょう。
作品解説
写真と映像の境界を探る意味は?
なぜ境界を探るのか
1.「写真」の定義の変化への問いかけ
従来の「写真」は、「真実を写す」ものと考えられてきました。しかし、デジタル技術の発展により、写真の加工は当たり前になり、あたかも「存在しないもの」が存在しているかのように見せることが可能になりました。証明写真の美肌補正や広告写真などがその例です。
このような状況において、「写真は一体何なのだろう?」という根本的な問いが生まれます。立川清志楼さんは、写真と映像の境界を探ることで、私たちが当たり前だと思っている「写真」とは何か、その本質を問い直していると言えるでしょう。
2.表現の可能性の拡大
写真が「静止した瞬間」を切り取る芸術であるのに対し、映像は「時間の流れ」を表現することができます。この二つのメディアの境界を探ることで、例えば静止画では表現しきれなかった時間の奥行きや、動画では伝えきれなかった一瞬の凝縮といった、これまでになかった新しい表現方法を見出すことができます。
立川清志楼さんは、写真の動画化や動画の写真化を通して、それぞれのメディアの良い部分を組み合わせ、より多角的で豊かな表現を追求していると考えられます。
3.主観と客観の探求
写真も映像も、撮影者の意図や視点が含まれることで、客観的な記録でありながらも主観的な表現となります。立川清志楼さんが動物園の映像で「都合の良い場面」だけではない動物の姿を捉えようとするのも、物語性を排して「物質的な映像作品」として提示しようとするのも、記録と表現、客観と主観の間の曖昧な境界を探る試みと言えるでしょう。
彼の探求は、CGなどの発展により、現実と見分けがつかないほどの映像が簡単に作れるようになった現代において、より一層その意味を増しています。
動物園映像の編集意図
1.「都合の良い場面」だけではない動物の姿を映す
動物園の動物たちは、普段、来園者の目を引くような劇的な行動ばかりをしているわけではありません。時にはゆったりと、時には目にも止まらぬ速さで、彼らの「生き様」をリアルタイムで見せています。立川清志楼さんは、こうした動物たちのありのままの姿、つまり「編集された映像のように、人々が興味を引く場面だけが都合よく見られるわけではない」という現実を捉え、それを超えた「物質的な映像作品」として提示しようとしています。
2.物語性を排した「生」の表現
彼の動物園映像は、物語的な解釈や感情的な側面を強調するのではなく、動物たちの身体性や存在そのものに焦点を当てています。実験的な編集を加えることで、視聴者に新たな視覚的体験を提供し、動物たちの動きや姿を、より深く、多角的に感じさせることを意図していると考えられます。
3.写真と映像の境界を探求するアプローチ
立川さんは、写真と映像の垣根を越えた表現を追求しており、動物園の映像はその重要なフィールドとなっています。例えば、動画からコマ写真を抽出したり、複数の写真を連続させて動画のように見せたりすることで、動きの中にある静止や、静止の中に潜む動きといった、両媒体の特性を巧みに操り、動物たちの存在を新たな形で提示しようとしています。
要するに、立川清志楼さんの動物園映像の編集意図は、動物たちのリアルな「生」を、実験的かつ物質的なアプローチで表現し、写真と映像の新たな可能性を探ることにあると言えるでしょう。
個展
・2023年8月 「生産報告命令」(Feb gallery Tokyo)
・2022年4月『彼(私)から見える世界』(イメージフォーラム・シネマテーク)
・2015年5月「檻Ⅲ」(ALTERNATIVE SPACE The White)
・2014年5月「檻Ⅱ」(ALTERNATIVE SPACE The White)
・2013年2月「檻」(Gallery Q)
グループ展
・2025年9月 「Study:大阪関西国際芸術祭2025」映像展示企画『Study:UMEDA URBAN MUSEUM』(ルクア大阪1F 南西ショーウィンドウ)
・2022年2月 「はじまりの残像」(ソニーイメージングギャラリー 銀座)
・2021年12月 モメラス実験公演『彼(私)から見える世界』映像展示( BUoY )
・2021年2月「網膜反転侵犯」(MEM)
・2020年10月「写真新世紀展2020」(東京都写真美術館)
・2019年10月「写真新世紀展2019」(東京都写真美術館)
・2018年3月「写真の地層展vol.19」(世田谷美術館)
・2016年7月「写真の地層展vol.18」(世田谷美術館)
・2015年12月「写真の地層展vol.17」(世田谷美術館)
ソロ上映会
・2025年9月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 54-56 & REMIX VJイベント」(soco1010)
・2025年6月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 51-53 & REMIX VJイベント」(soco1010)
・2025年3月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 48-50 & REMIX VJイベント」(soco1010)
・2024年12月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 42-47 & REMIX VJイベント」(soco1010)
・2024年7月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 40・41 & REMIX VJイベント」(Feb gallery Tokyo)
・2024年4月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 38・39 & REMIX VJイベント」(Feb gallery Tokyo)
・2024年1月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 37 & REMIX VJイベント」(Feb gallery Tokyo)
・2023年6月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 34・35・36 & remix」(BUoY)
・2023年4月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 31・32・33」(BUoY)
・2023年1月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 28・29・30」(BUoY)
・2022年10月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 25・26・27」(BUoY)
・2022年7月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 22・23・24」(BUoY)
・2022年4月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 19・20・21」(BUoY)
・2022年1月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 16・17・18」(BUoY)
・2021年11月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 13・14・15」(BUoY)
・2021年7月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 11・12」(BUoY)
・2021年4月 「第一次三カ年計画」Tatekawa Kiyoshiro film collection 1~10(イメージフォーラム・シネマテーク)
・2020年12月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 6」(Alt_Medium)
・2020年11月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 5」(Alt_Medium)
・2020年10月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 4」(Alt_Medium)
・2020年9月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 3」(Ko Murobushi Archive Cafe”Shy”)
・2020年8月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 2」(Alt_Medium)
・2020年7月 「Tatekawa Kiyoshiro film collection 1」(Alt_Medium)
グループ上映会
・2025年11月 「グラウンド・レベル・シネマ Vol.6.0」(イメージフォーラム・シネマテーク)
・2025年6月 「グラウンド・レベル・シネマ Vol.5.5」(イメージフォーラム・シネマテーク)
・2024年11月 「アイデンティティの境界線 〜グラウンド・レベル・シネマ+monade contemporary」(monade contemporary | 単子現代)
・2024年10.11月 「グラウンド・レベル・シネマ Vol.5.0」(イメージフォーラム・シネマテーク)
・2024年7月 「グラウンド・レベル・シネマ Vol.4.5」(イメージフォーラム・シネマテーク)
・2023年10.11月 「グラウンド・レベル・シネマ Vol.4.0」(イメージフォーラム・シネマテーク)
・2023年5月 「グラウンド・レベル・シネマ Vol.3.5」(イメージフォーラム・シネマテーク)
・2023年4月 「films – トランプル•ザ•ボーダー」(Feb gallery Tokyo)
・2022年4月 「フィルムズ – デイザ・イン・トーキョー」(Feb gallery Tokyo)
・2022年3月 「VIDEO PARTY 2022」(Lumen gallery)
・2020年12月 「material zone=物質地帯 festival」(scool.jp)
・2020年7月 「material zone=物質地帯2」(Alt_Medium)
・2020年7月 「〜映像と斜陽」(scool.jp)
・2020年2月 「material zone=物質地帯」(横浜美術館レクチャーホール)
・2019年12月 「Experience in Material Film collection 2」(IG Photo Gallery)
・2019年11月 「Experience in Material Film collection 2」(横浜美術館レクチャーホール)
・2019年7月 「Experience in Material Film collection 1」(イメージフォーラム・シネマテーク)
イベント
・2025年11月 「無為フェス vol.3 沈黙の呼吸 第二次三カ年計画(2024-2026)『即興による映像と音の分解と再生』」(BUoY)
・2023年12月 Study:大阪関西国際芸術祭 Vol.3/アート&クリエイティブフェア{2023.12.23-12.24} (グランフロント大阪)
・2023年11月 「無為フェス -Vol.2- 芸術のアブ 即興による映像インスタレーション「pre – 第二次三カ年計画」(BUoY)
演劇(映像参加)
・2021年12月 モメラス実験公演『彼(私)から見える世界』( BUoY )